ヴァイオリンバリバリ日記

なんかわかってきたよーな わかってないよーな

こんなに難しい楽器だなんてきいてない

わたくしは大人からヴァイオリンを始めた人ですが、ヴァイオリンを弾くのが面白くてすっかりはまってしまって、それはもう熱心に練習していました。
へったくそな状態から早くマシに、人に聞かれても恥ずかしくないくらいのレベルになりたくて、社会人ながら毎日朝晩練習。ヴァイオリンがこんな難しい楽器だなんて知らなかった。初めてヴァイオリンを弾いたときの衝撃は忘れられない。「は?」でした。なんだこれ、みたいな。わたしの知っている音がしないぞ。

クラシック音楽好きだったので、プロの音とは全く違う、チーチーとした音を出すことに仰天しました。異音に戸惑いながら弓をギコギコ往復させるわたし。な、なんだろうこの音は…。これは本当にヴァイオリンなのか!? ヴァイオリンみたいな箱から謎の音がするんだけど。
弓の角度を直しながら先生が「いいですよ〜」なんて言うから、ますます頭が混乱する。いやいや、イイデスヨーって、ちっとも良くないじゃん!知ってる音と全然違うし。

「これ、ヴァイオリンみたいな音がしないのは、なぜですか」とストレートに疑問をぶつけたときの、先生の複雑な表情は忘れられない。
「うーん、まずは弓を真っ直ぐに弾けるようにならないとね」あ、これ難しい問題なのだな、ということは理解した。
子供の頃、ピアノをちょろっと習っていたこともあって、真面目に練習さえすれば、音を並べることぐらいはできるのだと思っていたが、違った。音を並べることがこれほどまでに難しいなんて。わたしは今、スタートラインよりもずっと後ろにいるんだ。スタートラインがはるか遠く先であることを悟り、震えました。

大人からチェロを始めた人が、音程を外していても、箱が大きいのが幸いして、初期の頃から弦楽器っぽい音がするのも嫉妬でした。ヴァイオリンはそうはいかない。くっそ、そうと知っていればチェロにしたものを…。

しかし、この全く歯が立たないヴァイオリンの存在が逆に面白くて、のめり込むことに。初めてA線のラシドレミを習った時は嬉しくて、その5音で弾けるフレーズを思いつくだけ延々と弾いてたこともありました。興味の強さは練習頻度・時間に比例して、習い初めの2年間くらいは速い進度で教本がどんどん進む。「あと1〜2年くらい続ければ、ヴァイオリンっぽい音を出せるのかな〜。そしたらまずはドッペル弾くんだ〜」などと思いながら、せっせとザイツの練習に励む。

ところが、習いはじめて2年半くらいで、これはあかん、と察した。毎日練習を頑張ってるのにもかかわらず、ぜんっぜんヴァイオリンみたいな音にならない。なれる見込みも全くない。
あれ、これはやばくない…? そういえば、大人から始めた周りの人たちも、みんな同じようなチーチー音をさせてる。え、なにこれ怖い。そんな事実に気づいてしまった。

これは練習が足りないのであろう。「部活並みにガンガン練習したいので、教本と課題を増量して欲しい」と先生に依頼しました。忙しい社会人に向けた、「練習しなくても怒りません♪」のお気軽ゆるゆるレッスンが主流の中で、課題を増やして欲しいと申し出るわたしは、さぞ奇異な存在だったらしい。異教徒を見るような先生のあの目が忘れられない。

課題が一気に増えて大満足していたものの、半年がすぎても音色が全く変わらない。前よりも練習時間を増やしているのに、上達している感が微塵も感じられない。始めて2年目の状態から変わっているとは思えない。これは、もしかして、認めたくないけれども、いわゆる才能の限界、頭打ち状態…?? こんなにも練習が好きなのに?? そんなはずある!? わたしは器用貧乏なタイプなので、こんなダメダメレベルじゃなくて、もうちょいマシになれると思っているのだが!? 正直努力もしている!!

3年目くらいで伸び悩み、ネットの情報を読み漁り、師事する先生を替え、単発のワークショップへ顔を出し、よりストイックに練習を続けました。素晴らしい先生に出会えたものの、ヴァイオリンのような音を出せる感じも全くなくさらに2年がすぎ、さすがにこの現実を、「自分にはセンスがなかった」ということを、いやいやまさか、と認めずにいましたが、受け入れなくてはならない系…?と思い始めていました。

転機は5年目に訪れました。5年目からの1年間で、ぶっちゃけ超伸びた。超伸びたとか書きましたが、この変化はわたしにしか判らない程度かもしれない。でも、自分比ですごく…上手くなってるぞ!?と自分の上達を初めて認めることができたのです。音も変わってきている(たぶん)。

すると、自認してから直近のレッスンで、先生にも「よくなりましたよ。去年の発表会の頃と全然違う。たった1年ですごく変わった」と、2.5年通って初めて言われたので、まあそうなんだと思います(ドヤ顔)。わたし、上手くなる方法、分かったかもしれない。

転機は何かというと、色々あって先生と上手くいかず、レッスン帰り肩を落としてトボトボ歩いていたときのこと。

「ヴァイオリンって弾くのがまず難しいから、注意を受けてもすぐに直せないんだよなあ。直せないと先生がイライラしてくるのがわかって、ちょー萎縮しちゃうしなあ。左手と右手で違うことやらせて、脳のリソースが不足している状態で萎縮してたら、もはやできるはずがないんだよなあ。つーかさあ、そもそもわたしは褒められて伸びるタイプであって、貶されて成長するタイプでは断じてないっつーのに…」

と悶々と考えてハッとしました。そうよ、わたしは褒められて伸びるタイプなのに、今まで自分を痛烈に罵倒しながら練習していたわ、という事実に。これは違うんじゃない!?

というわけで、熱心に練習されている方はぜひ一度試していただきたい。わたしはこれを1年実践し続けて、めちゃくちゃ効果がありました。

その方法とは「自分にダメ出しをしない」こと。これです。

「あ、音外した。ほら詰まったようなひどい音!あー汚い聞いてられない。へたくそへたくそ」と、ひっきりなしに罵詈雑言を浴びせ続けていました。多分熱心な人、理想がある人ほどやりがちだと思うんですが、注意は先生だけで充分なんだよ! 自分が褒めなかったら、この世で他に誰が褒めてくれるというのか! 大人だから褒めてくれるママもいないんだよ!!(※存命です)だから、まずは自分が自分の味方になろう! ストップDV!

セルフ批判をやめるだけで、上達速度が上がる気がします。マジで。
これはヴァイオリンなど芸事だけの話ではなく、仕事などどんなジャンルにも言えることだと思う。マジで。

実践してから先生との関係も良好になり、レッスンで萎縮することもなくなりました。めでたしめでたし。